ちなみに近年のアニメ背景について宮崎駿のありがたいお言葉 一方ではパソコンで背景を描くのが普通になっていて。でもそうすると、 影の中の色をどういうふうにするのかというと、絞るだけなんですよ、暗く。 コントラストを強くすればね、なんとなく絵らしく見える。明るいところはとばせばいい。 それで、絵の具を使って影の中にどうやって色をつけるかとか、一見黒く見えるけれど、 その中にいろんな複雑な色があるってことを見抜いていくとか、そういう観察を 積み上げてきた絵の技法とかについて、全部無知になってきちゃって。 ただ絞るだけ、暗くするだけなんですよね。もうデジタルになってからほんとにパーになってるんですよ。 『おまえらちゃんと絵描け!』って。ロケハンに行くとすぐ写真撮ってくる。 写真横に置いて描く。写真にも色があるからそのとおり描く。 だから『バカっ! 写真機持ってくんな!』って(笑)。そういうふうになってるんですよね、どんどん。 (略)ほんとにねえ、下手くそになってるんですよ、みんな。しかも手間かかる。 だって昔のよりも倍もいるんだもん、美術のスタッフが。 『トトロ』やってる時なんて10人もいなかったですからね、美術なんて。 ガランとしたところでやってました。今はみんな遅いんです。 職場を回ってると、何やってんだこいつらと思う。(笑)どうしたらいいんですかね、この荒涼たる人材不足を。 いや、ほんとに。デジタルに侵されてるんですよね。自分の見たものではなくて、 とにかくビデオカメラか、携帯か、なんかで撮った画像で世界を見てる。 だから初めからパース線が決まってて。不動産屋の広告みたいに、みんな広角になってる。 そこに平面の下手くそな絵を乗っけるから、妙な画面ができる。